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イギリスで作曲家10万組以上を代表する音楽出版団体「PRS for Music」が、音楽共有サービスSoundCloudに対して、著作権を侵害していると訴訟を起こしました。PRS for Musicは、SoundCloudは団体に所属するソングライターの楽曲に関するライセンスを取得せずに利用してきたと説明しています。

PRS for Musicが所属するソングライターに送ったメールによれば、団体とSoundCloudは過去5年に渡って交渉を続けてきましたが合意に至らず、その期間中もSoundCloudはヨーロッパ及びイギリスで楽曲利用に必要なライセンスの取得を拒否し続け、ソングライターに支払われるはずのライセンス料分配を無視してきたことから、訴訟を起こした理由としています。

PRS for Musicは、SoundCloudに何度もライセンスを取得し著作権を侵害する行為を止めるよう依頼し、レパートリーのサンプル4500曲のリストを送りていました。SoundCloudはPRS for Musicに「250曲」を削除したことを伝えてきましたが、団体はその対応に満足しておらず、250曲を削除した理由も明確にされていないことを疑問視しています。

今回の訴訟は「難しい決定」だったが、「メンバーにとって長期的に最良な利益」となるという考えのもと、もし音楽ストリーミングの市場が真の可能性に到達し、作曲家たちに公平な対価が支払うことができるなら、SoundCloudのような音楽ストリーミングサービスは支払うべきであると述べます。

PRS for Musicは「ストリーミング市場はクリエイターに対価を支払うためにライセンスを取得しなければ、公平に成長はしない」と主張しています。そしてさらなる訴訟に発展する前にこの問題を解決したいと、和解する構えも見せています。

ベルリンに本拠地を置くSoundCloudは、2008年にサービスを開始し、ユーザーが制作したトラックやリミックス、ミックスを自由にフリーでアップロードし共有できることで、月間1億7500万人以上のユーザーを集める世界的なサービスに成長してきました。またニュージーランド人アーティストでグラミー賞を受賞したロードや、ドレイク、Skrillexなどアーティストも早くからSoundCloudで楽曲を公開して、ファン層を拡大してくるといった、プロモーション活動の機能も果たしています。

しかしSoundCloudは自由にトラックをアップロードできるシステムから、著作権を侵害するトラックでもアップでき、さらにこれまでレコード会社とライセンス契約を結んでいないためアーティストには一切ロイヤリティが支払われないことから、ソニーミュージックが一部の楽曲を引き下げるなど、音楽業界からは厳しい目にさらされてきました。

2014年に入りようやくSoundCloudは広告モデルの導入を決定しクリエイターへのロイヤリティ料支払いを開始、ワーナーミュージックやインディーズレーベル団体Merlinとライセンス契約を結びました。さらにサブスクリプション型サービスの開発も進めて収益確保に注力しています。

しかしレコードレーベルとのライセンス契約は結んでいますが、作曲家を含む実演権団体 (performing rights organization) とのライセンス契約は締結していません。

ソース
PRS for Music takes legal action against SoundCloud streaming service(The Guardian)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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