英国発のコンサート発見サービス「Songkick」は、コンサートツアーをクラウドファンディングで実施するアーティスト向けマーケティング・プロジェクトを実施しています。ファンが開催してほしい街のライブチケットを事前に一定数を購入することで、初めて開催が決定しツアーを企画する新しいコンサート支援システム『Songkick Detour』です。
ただチケットが購入されるだけでは駄目で、一定数のチケットが購入された時点でライブが決定する仕組み。地元でライブを見たい場合、一定の人数を確約しなければならないため、コアファンは友人にライブを告知して賛同者を募ります。ファン同士ではプロモーションとアーティスト支援につながり、アーティストにとっては確実に収益が挙げられるライブのみのツアーを組むことが出来ます。
2011年末からこれまで欧州を中心に、ホット・チップ (Hot Chip)とTycho(ティコ)がこのプロジェクトに参加してツアーを行いました。Songkick Detour利用の結果、なんとツアーは全て完売になったそうです。(例えばホット・チップの場合、英国南東の街フォークストン(Folkestone)で行われたライブでは、一人の熱烈的コアファンが一人で2000人以上にメールを送り、ライブを告知した結果、200人がチケット購入しライブは完売)。
今回Songkickは更にDetourの範囲を拡大します。米インデューズミュージシャンのアンドリュー・バード(Andrew Bird)はSongkick Detourを使って、南米ツアーを2013年2月から開始することを発表しました。
image via Songkick blog
南米の音楽市場における米国音楽へのニーズは非常に高い反面、渡航距離などの問題によってツアーが実施される機会は少ないため、南米ファンは好きなアーティストを見る機会が閉ざされていました。もちろん、アンドリュー・バードのライブも見たことはありません。Songkick Detourを使うことで、ファンに自分の街でライブを見てもらう機会を提供し、アーティストには集客へのリスク低減が実現します。
image via Songkick blog
例えばアンドリュー・バードの場合、南米15都市を対象にライブを集い、もっともチケットが購入された都市6カ所が最終的なツアー開催都市に決定しました。このようにSongkick Detourでは、ファンのアーティスト支援度で都市ごとに競うゲーミフィケーションの要素も含まれます。
SongkickのCEO, イアン・ホガース(Ian Hogath)は、Songkick Detourの成功を口コミ草の根運動の性質を持つ音楽ファンの力と捉え、熱烈なライブ好きが集まるSongkickユーザーに最適なサービスとなると述べています。
アンドリュー・バードのツアーは2/17から2/28まで。
このシステム、グルーポンとキックスターターにコミュニティ性を合わせたサービスですね。キックスターターでもファンの街でのライブ実施権利を販売するアーティストもいます。でもその権利は通常高額なので、販売数も少なかったり、異なる街での希望だったりしてリスクも大きいですよね。Detourの場合、ソーシャル上でニーズの多い街をターゲットに出来て、かつ一定のチケット販売も行えるので、アーティストが行ったことのない地域へのツアーを企画するには優れたツールだと言えます。ファンにとっても、アーティストのチケットを集団で購入することで、アーティストのライブを自分の街で実現させることができ、そのアーティストをサポートしていることがよりパーソナルなレベルで実感しやすくなるアプローチでもあります。今後、どういう展開になるのか、Songkickには今確認しています。音楽サービスとアーティストの新しいコラボレーションとして、ライブ市場に新しい変化をもたらせるか、注目したいです。
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