いよいよ日本でもドコモから発売すると噂されている新型iPhone。新端末に搭載予定の新しい音楽ストリーミングサービス「iTunes Radio」のビジネスを強化するため、アップルは米国のiAd部門での人材採用を強化しています。
iTunes Radioは広告付きの無料で利用できる音楽サービスで、iPhoneやiPad、iPod TouchやApple TVなどで利用ができます。サービス自体は、ユーザーのiTunesでの購入履歴や趣味嗜好を分析し、各ユーザーに最適な音楽を自動レコメンドしてくれる、「パーソナライズド・ネットラジオ」です。サービスはiOS 7に搭載される無料サービスですが、楽曲の間に広告が挿入される広告ビジネスを採用しています。
アップルはiTunes RadioをiTunesに続く音楽ビジネスの収益源にするために、二つの狙いがあります。一つはiTunesとの連携させ、ラジオステーションを聴きながら気に入った曲をワンタッチでiTunesで購入できるシステムを実装しています。このシステムによってiTunesでの売上アップ、そしてレコード会社への収益分配に繋げていきます。
もう一つはiTunes Radioに挿入される一般企業との広告ビジネスです。
この二つを実現するためには、サービス利用時に挿入される広告のクライアントを獲得したり、最適な広告を提供できるiAdチームの編成に迫られています。アップルにとってiAd戦略こそが、次の音楽サービスを成功させ、今後のアップルのコンテンツビジネスを成長させるためのカギになります。
アップルは現在主にカリフォルニア州で、自社の求人ページでiAd関連の職種を5つ、LinkedInでは35の募集を公開しています。その中にはアカウント・コーディネーター、広告デザイン・マネージャー、プロジェクト・マネージャー、リッチ・メディア・エンジニアなど多岐に渡る内容になっています。
またアップルはiAd部門のクリエイティブを強化するため、広告業界の幹部を採用し始めています。アップルは広告代理店DDB ChicagoやEnergy BBDOなどで人材担当ディレクターを勤めたリンダ・ウェイスト(Linda Waste)をシニア・リクルーティング・マネージャーとして採用し、iAd部門のデザインやユーザービリティを統括する「iAd Creative Manager」などの人材採用を担当しています。
iTunes Radioの広告フォーマットは、3つのフォーマットで形成されます。オーディオ広告、動画広告、「slate」(スレート)と呼ばれるインタラクティブなディスプレイ広告です。ディスプレイ広告は、ユーザーが利用する端末(iPhone、iPad、iMac、MacBook、Windows PC、Apple TVなど)に応じて最適化され表示されます。
iTunes Radioの登場でアップルはモバイルバナー中心だったiAdを、オーディオや動画を使ったよりクリエイティブな広告へと拡張することが可能になります。9月10日にユーザー向けにリリースが予定されるiTunes Radioでは、マクドナルド、日産、ペプシやP&Gなど大手ブランドすでに広告パートナーとして参加しています。
アップルの新音楽サービス「iTunes Radio」は9月から開始へ、大手ブランドと広告契約で合意
iAdのクリエイティブを強化するということは、ブランドや広告エージェンシーがアップル製品に最適化した、より魅力的な広告を展開するためのモバイル戦略をアップルが強力に支援していくことを意味しています。iTunes Radioの途中に流れる広告が、アップルの世界観にそぐわなかったり、まったく関連性の無い企業広告だとしたら、ユーザーから共感を得ることができずに、アップルの企業ブランドイメージにとっても広告ビジネスにとっても大打撃となる可能性があります。
個人的な意見ですが、アップルはコンテンツやモバイルでの広告戦略をTwitterやFacebookに比べ、注力してこなかったイメージがあります。もちろんアップルは製品が第一の企業なのでコンテンツサービスやオンラインメディアとは違うのですが。
またアップルユーザーが新しいiPhoneで新しい広告を受け入れ共感するかどうかもアップルにとっては未知数。iTunes Radioは、アップルの音楽ビジネスにとってiPod以来最大の挑戦になるでしょう。
最大の疑問ですが、日本ではいつリリースするのでしょうか?
ソース
Apple Hiring for iAd Team as iTunes Radio Launch Approaches(9/4 AdAge)