ユニバーサルミュージック・グループと広告エージェンシー・グループHavasは、音楽とマーケティングをブランドに提供する新しい形のレーベル「Pop Records」を立ち上げる。AdAgeがレポートしている。
ユニバーサルミュージックと世界に拠点を置く広告会社グループHavasの傘下にある広告エージェンシー「BETC」と共同でPop Recordsを運営し、ブランドとアーティストのパートナーシップを活用したマーケティングをグローバル規模で展開していく。Pop Recordsはパリに拠点を置き、ローリング・ストーンズやラナ・デル・レイなどをリリースするポリドール・レコードのサブレーベルとなる。両社は年内にアーティスト第一号との契約を目指し交渉を開始している。
Pop Recordsは、BETCの副社長Fabrice Brovelli、BETCのクリエイティブ・ミュージック・ディレクターChristophe Caurret、BETCの音楽戦略プランナー兼ブランド・パートナーシップ・マネージャーIsabelle Tardieuが立ち上げメンバーとなる。BrovelliとCaurretは過去にエールフランスとケミカル・ブラザーズ、ジョルジュアルマーニとラ・ルー、EvianとQueenになど、アーティストとブランドによるコラボレーションを実現させてきた。またTardieuは広告業界以前にはワーナーミュージック・フランスのブランドマネージャーを務めていた人物だ。
ポリドール・レコードのマーケティング・ディスレクターNicolas Pelletは、「広告エージェンシーが参加することによって、我々のマーケティングをさらに強化することが可能になる。レーベルの方向性はエージェンシーが決めていくだろう」と答え、運営方針がレコード会社主導ではなく、スポンサー契約やブランド提携を引き出すエージェンシーに主導権があることが伺える。
今後Pop Recordsでは、BETCが運営するポップ・カルチャー・クリエイティブ専門のエージェンシーBETC POPと連携しながら、アーティストとブランドがコラボレーションするためのコンテンツ開発やメディア戦略に取り組む。
アーティストとブランドのパートナーシップには、製品やサービス、企業メッセージをコミュニケーションしたい企業にとって、新しいマーケティング手法として世界的に注目を集めている。またSpotifyなど音楽サービスも、音楽にデータやデジタルマーケティングを組み合わせたマーケティングを企業と共に行っている。IEG Sponsorshipのレポートによれば、2015年に北米企業は音楽スポンサーシップへ過去最高となる14億ドル(約1680億円)を投資すると推測されている。これは2014年から4.8%増加している。
日本では、音楽とブランド、広告といえば、「タイアップ」や「スポンサーシップ」というイメージが強い。そのため、Pop Recordsに似たレコード会社とマーケティング会社のコラボレーションやブランドパートナーシップが実現することは少ない。しかし別の見方をすれば、タイアップがこれだけ多い国も珍しいと感じるし、その分ニーズが多いと思う。まだ日本では音楽とブランドが実現するためのハードルが多いと思うが、タイミングとして音楽ストリーミングサービスへの注目やスマートフォンでの音楽視聴など、今は音楽ビジネスが大きな変革期を迎えていることを考えると、両者の関係も今後すぐに変わるのではないか?
SNSやスマートフォンの利用時間が増えれば、コンテンツの接触の仕方も変化することから、コンテンツの送り手と作り手は、日常的なアクティビティや非日常的な出来事を通じて、多くの選択肢を示してコンテンツに触れさせ、ターゲットの意識を変えることもできるという、ブランドのメッセージを音楽で届ける新たなマーケティングの考え方が、今世界では起き始めている。
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ソース
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