教育現場では、オンライン授業やリモート学習の導入において、今も課題が山積みです。生徒に平等な学習機会と環境を提供することの難しさが浮き彫りになっただけでなく、先生や学校も、オンライン用の教材やカリキュラム、ツールなど新たな学習方法に対応が迫られています。

Yousician_app

そのような厳しい状況下で、音楽レッスンや練習メニューをオンライン化で支援するフィンランドの音楽教育専門プラットフォーム「Yousician」は、2800万ドル(約30億円)の資金を調達したことを発表しました。今回の投資によって、同社の合計調達額は3500万ドル(約38億円)になりました。

ラウンドBは、True Venturesがリードしました。またポール・マッカートニーが運営する投資会社MPL Venturesも出資しています。

True Venturesはこれまで、Peloton (2019年にNasdaq上場)やring (アマゾンが買収)などの投資で成功しているVCです。音楽系スタートアップでは過去にBandcampやSplice、Endelを支援しています。

その他には、アマゾンのAlexa Fund、エンジェルインベスターで、Zyngaの創業者であるマーク・ピンカス(Mark Pincus)、ゲームエンジン開発のUnity Technologies創業者のデヴィッド・ヘルガソン(David Helgason)、ブルーボトルコーヒー会長のブライアン・ミーハン(Bryan Meehan)、気候投資のスタートアップCooler Future創業者のモアファク・アフメド(Moaffak Ahmed)、ホテル検索のTrivagoの共同創業者ロルフ・シュレームゲンス(Rolf Schrömgens)、テック業界で多様性ある人材育成を支援する団体The Shortcutの創業者アン・バダン(Anne Badan)、LAUNCH Fund創業者のジェイソン・カラカニス(Jason calacanis)も参加しました。

Yousicianが提供するプラットフォームとツールは、演奏を独学で学びたい人や、スキルを上達したい人向けに最適化した完全オンラインの学習環境を提供います。

同社は、ギターやベース、ピアノ、ボーカルの練習をオンラインでできる、オンデマンド型のプラットフォーム「Yousician」を開発してきました。独学で演奏力や歌唱力を伸ばしたい人が自由にアクセスでき、さまざまなジャンルやスキルレベルに応じたレッスンと楽曲が用意されています。

特徴なのは、ゲーミフィケーションを活用してスキルアップを促す練習スタイルです。

Yousicianのユーザーは、『ロックスミス』や『ギターヒーロー』のような音楽ゲームに似たレッスンアプリが表示する楽譜に合わせて楽器演奏します。スマートフォンやラップトップのマイクが楽器の生音を認識して、演奏をフレーズ毎に採点。そして、演奏スキルを習得するとポイント獲得に繋がり、次のレッスンや練習メニューがアンロックされていきます。10分から始められ初心者でも続けられるように短めに設定されています。

レッスンはインタラクティブ型で進みます。演奏中に間違えたフレーズがリアルタイムで表示されたり、演奏後すぐに採点されます。

ライブ配信するレッスン動画や、収録済みの実演動画を真似する練習では把握しにくい改善点も、Yousicianでは時間をかけずに見えるため、自分のペースでスキルアップを実感することができる仕組みです。

レッスンを続けるための「チャレンジ」メニューも用意されています。スキルに応じてゴール(スキルアップ)を達成するためのさまざまなチャレンジがあり、継続性を保つサポートも細部まで整っています。

Yousicianでは、実演以外にも必要なスキルを教えてくれるのも特徴です。コードやスケールの反復練習や、楽器のチューニングの仕方なども学べます。

プレミアム・ユーザーには、ジャンルやスキル別に豊富な楽曲が用意されています。その中には、ビリー・アイリッシュの「when the party’s over」やチャーリー・プースの「Attention」、リンキン・パークの「Numb」などメジャーレーベルが配信する楽曲も含まれており、ギターやピアノ、ボーカルレッスン用にアレンジされています。

ただし、他社の練習アプリであるFender PlayやFlowKeyなどでも同じように豊富な楽曲を揃えています。

利用には無料からも始められますが、コンテンツにフルアクセスするにはサブスクリプションが必要で、月額19.95ドル(約2,200円)からプランが用意されています。

またYousicianでは日本語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、中国語対応しています。アプリ内で言語設定を簡単に変えることができます。

コロナ禍で音楽教師支援も展開

2020年に突然発生した新型コロナウイルスの感染拡大によって、教育現場や先生、講師たちは、授業やレッスンをオンライン移行せざるをえませんでした。

その中でYousicianは、音楽教育やレッスンのオンライン化、リモート学習の需要に応え大きく飛躍しました。

Yousicianのプラットフォームの利用者は、全世界で月間2000万人を超えました。そして同社の売上高は、2020年に5000万ドル以上(54億円)まで増加しました。

またYousicianでは昨年、対面授業が受けられない生徒や、教材の無い先生たち10万人以上にサブスクリプションを無償提供しており、音楽レッスンを自宅でも続けられるよう支援活動も行なっています。

Yousician For Teachers

Yousicianは決してこれまでの音楽教室や対面でのレッスンを無くしたり、競争するものはありません。むしろ、スキルを磨くための練習用ツールとしてレッスンの合間に活用できるため、Yousicianを生徒に薦める音楽教師もいるそうです。

何より、自分の好きな時間を活用したり、空いた時間を使って練習できるため、レッスンの事前予約や、講師の動画配信時間に合わせる必要が無くなり、時間の有効活用が進みます。

音楽教育では、高いレッスン料だけを支払っても続かないことを危惧する人も多いはずです。今後は、Yousicianのような低コストで時間制限の無いオンラインプラットフォームを通じて、楽器を始めてみる人も増えるかもしれません。

同社は新たな資金で、製品開発、人材採用、マーケティング、アーティスト・パートナーシップを強化していきます。

source:
Yousician raises $28M to make music education more accessible (TechCrunch)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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